2005年5月26日木曜日

真夜中の訪問者

「ごめんください」
少女の部屋の窓が叩かれる。ぐっすりと眠っていた少女は、跳び起きて窓を開ける。
「はーい」
「今晩は」
真夜中の訪問者は、スラリと背が高い青年である。少女が見上げると、ニッコリと笑い、白目と歯を光らせた。
「ハイ、どうぞ。今週の飴玉だよ。いつも通り、りんご味を30粒」
少女は、飴の入った箱を受け取ると、空になった箱を青年に渡した。来週はこの箱に飴玉が詰められ少女の手に戻ってくる。
「じゃ、サインをお願いします」
慣れた手付きでサインをし、窓から出ていく青年に手を振った。
ベッド戻った少女は、すぐにすやすやと寝息をたてはじめる。
毎週真夜中に届く大好きな飴玉。だが、それを知っているのは、尻尾を切られた黒猫だけである。