2008年1月25日金曜日

吊り橋のまんなかで

吊り橋のまんなかで、一頭の蝶が泣いていた。
蝶は吊り橋が怖くて泣いていたのではない。動けないには変わりないが。
小さな男の子が蝶に気づいた。
「ちょうちょさん、どうしたの? あと少しで踏んでしまうところだったよ」
蝶はべったりと橋に貼りついていた。
「どうしてこんなことに!」
男の子は懸命に蝶を剥がした。けれども、途中で蝶は息絶えた。
男の子はなおも輝く蝶をそっとつまみ、泣いている。
蝶の死が悲しくて泣いているのではない。彼もまた、動けないからだ。
その時、橋を渡りはじめた少女がいた。男の子は少女が自分と同じ行動をするだろうと確信し、絶望する。