懸恋-keren-
超短編
2008年1月11日金曜日
雪の上を歩いた話
雪の感触を肉球で確かめながら、思ったより悪くないな、と尻尾を切られた黒猫は考えた。
「ヌバタマ、寒くないの」
と白い息で少女は言う。人間は毛皮がないから、羊の毛を借りるらしい。少女は、耳あてのついた羊の毛の帽子と、羊の毛の手袋をして、それでもまだ寒そうに縮こまりながら歩いている。
〔寒い〕
ヒゲが凍りそうなのは、頂けない。
「でも、なんだか楽しそうだよ。猫は寒いの苦手だと思ってた」
雪が積もった後の満月だから、闇に紛れるどころか、黒猫は何よりも目立っている。
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