惚れた男は幽霊だった。
そうと知ってはいたものの惚れた弱み、まぐわって、子を産んだ。
産まれた子は幽霊ではなかったが、やたらと若い女の幽霊に媚びを売られ、ほいほいとついていく。次々と女についていくから息子はなかなか家に寄り付かないが、息子の子を孕んだ幽霊は、なぜか私の元に居座る。
今、私には嫁が8人と、孫が11人いる。全員幽霊だ。嫁も孫も皆かわいく、よくしてくれるが、ちょっとばかり肩身が狭い。私も早く幽霊になりたくて剃刀を持ち出したこと数知れず。
けれども8人の嫁が「いけません、おかあさま」とやるもんだから、死ぬに死ねない。