尻尾を切られた黒猫は飛行少年の部屋に迷い込んでしまった。
飛行少年は、デスクライトだけを点けた薄暗い部屋の中で飛行機のグラビア写真を食い入るように見つめていたから、黒猫に気付く様子はなかった。
飛行少年の部屋には小さいのも大きいのも、沢山の飛行機の模型が並んでいた。
夥しい飛行機に囲まれながら、飛行少年は飛行機のグラビアを、頬を赤く染めながら、うっとりと見つめているのだった。
黒猫は、船については少女から船長の話を聞いていたからよく知っていたが、飛行機のことは知らなかった。
後から月に尋ねると
「飛行機? あれじゃ私の処へは到底来られないね」
それきり黒猫は飛行機への興味を失った。