少年は小さな銀色の花を見つけた。彼の家の玄関から百二十五歩の道端に。毎日水をやり、話かけた。嵐の日も雪の日も
「やぁ、僕のともだち。銀色のお花、元気かい?今日もきれいだね」
少年が青年になってもその習慣は変わらない。大きくなった彼の足が、八十五歩で銀色の花にたどり着くようになっただけ。
老人になっても変わらない。人々は彼を奇人扱いしたが、一年中みずみずしい葉と花を保つ小さな銀色の花こそがおかしいと気づく者はいない。
彼は、銀色の花の傍らで蹲ったまま命を終えた。ごろり、と風で彼の亡骸は転がり、銀色の花は下敷きになった。
翌日、すでに死体はない。銀色の花は一回り大きくなって風にそよいでいる。