その他の人々は、みな風船を胸にぶら下げている。
風船の色形はさまざまだ。大きな風船の人は時々ふわりと浮き上がるし、小さな風船の人は、しぼまないように大切にしている。
赤い風船の人は「情熱的なキスをするに違いない」と噂され、青い風船の人は「冷たい人って思われて困るんだ」とぼやく。
だが、ぼくにそんな悩みはない。だって風船がないんだもの。ぼくの風船は、生まれたときにぱちんと割れた。
きっとぼくが出来損ないだから簡単に割れてしまったのだろう。どんな形のどんな風船だったか、母も産婆さんも、「覚えていない」と申し訳なさそうな顔で言うだけだ。