泥棒のスチュワートは四部屋だけの小さなアパートにやってきた。夜を盗むためである。
抜き足差し足忍び足、階段をあがり、202号室のドアの錠を針金で開ける。
202号室のリチャードは、明日の試験に備えて徹夜の勉強中だった。これでは夜を盗めない。
隣の201号室のジョンは、テレビゲームに夢中だった。これでは夜を盗めない。
気を取り直して一階へ降りる。102号室のポールは、ベッドを軋ませ愛を喚いていた。うぶなスチュワートは動揺する。
深呼吸してから101号室へ。101号室のジョージは、ぶつぶつと何か呟きながら酒を飲んでいた。酒臭さに辟易してあわててドアを閉めた。
「嗚呼!マミィ。俺はただすやすやと眠る人から夜を盗みたかっただけなのに!一体なにがいけなかったの?」
スチュワートは暖かいベッドに潜り込み、仕事をしくじったとベソをかく。