いまにも溢れそうな涙を舌で掬い、飲み込んだ。すると、キミはいよいよ泣き出すから、ぼくは流れる涙を次々に舐める。
ぼくの舌はキミの朿で傷だらけになり、涙は血の味になった。
サボテンであるキミが涙のような露を出すと知ったのは、ぼくが初めフられた日の夜だった。
朿の先にぷわりと水玉が膨らむのを見て、これは涙だ、ぼくの代わりに泣いているのかもしれない、と思った。
あの日からだいぶ月日は過ぎた。ぼくは何度もサボテンを泣かせた。けれども、流れるほどサボテンが泣くのは初めてだ。
そう。今夜、ぼくはすごく泣きたい。声出して泣きたい。かわりにサボテンが泣いてくれるなら、ぼくはその涙を全部引き受ける。