2002年11月16日土曜日

星を食べた話

「いらっしゃいませ。今晩は星屑シャーベットをお召し上がりください」
「星屑シャーベット?」
「本物の星屑のシャーベットです。年に一度しか手に入らないので本日限定、です」
そういって『スターダスト』のマスターは小さなガラスの器を出した。
薄暗い店の中でも、キラキラと眩しくほんのり酸味の利いたシャーベット。
「冬にシャーベットじゃあ、嫌がる人もいるでしょう?」
「私も色々と試してみたんですが……温めるとそれはもう、まずいんです。びっくりするくらい」
「へえ! 星屑ってどうやって手に入れるの?」
「これは、秘密なんですが……。うちの冷凍庫に出現するのです」
小さな器に乗ったシャーベットは、ほんの数口で食べ終わった。
「それはすごい!よくこれが星屑だとわかりましたね」
「それはお月さまが、こっそり」
「なるほどね」

マスターはそわそわと口を開いた。
「それで、シャーベットはどんなお味でしたか?」
「え?甘酸っぱくておいしかったよ」
「このシャーベット、食べる人によって味が変わるんです」