2002年11月18日月曜日

TOUR DE CHAT-NOIR

「黒猫の塔」と呼ばれる場所がある。
しかし、それは「塔」と呼ぶのが恥ずかしいような小さな建物で、なぜそれが「塔」なのかは判らなかった。
「あのうち、何て呼ばれているか、ご存知ですか?」
『スターダスト』からの帰り道、散歩がてらの遠回りお月さまに聞いてみた。
「黒猫の塔、でしょう?もちろん知っていますよ。私がそう呼んだのだから」
私が少し驚いた顔をしたのを見てお月さまは微かに笑った。
「黒猫について入ると、延々階段が続きましてね。それはもう、息が上がってしまって。ひどい目に合いました」
「黒猫がいない時は?」
「ただの空家。 入ってみますか?」
そのとき、ちらりと二つの光が見えた。
「……遠慮しておきます」
今度はとても愉快そうに笑った、お月さま。