2002年11月10日日曜日

ポケットの中の月

お月さまに「ポケットに入らせてくれないか」と言われた時は仰天した。
返事をするまでもなくお月さまは、私の外套の右ポケットの中に入り、その途端月明かりはなくなった。
満月の夜空は晴れているのに突然暗くなり、人々は少なからず驚いた。
その様子を察してポケットの中で月ははしゃいだ。
なにやら焦げ臭くなり、ポケットに目をやると煙が出ていた。
右ポケットには煙草とマッチが入ったままだったのだ。
慌ててポケットを叩き火を消すと真っ黒に煤けた月が出てきた。

後日新しい外套を贈ってくれたが、それはとても着られたものではない。