懸恋-keren-
超短編
2002年11月9日土曜日
霧にだまされた話
角を曲がると濃い霧がかかっていた。
霧は白い壁のようであまりにも不自然だったので何度も行ったり来たりうろうろとした。
そうするうちに、ついに約束の時間を過ぎてしまった。
古い友人と会うことになっていたのだ。
「そりゃあ君、霧にだまされたんだな。他のひとは普通に通り過ぎてただろう?」
「そんな、馬鹿な」
「正確に言えば、月の仕業だ。黒猫といっしょになって夜のうちにあちこち悪戯をしかけておくのさ」
まったくお月さまのやることときたら!
次の投稿
前の投稿
ホーム