懸恋-keren-
超短編
2009年1月5日月曜日
散歩前のしっぽ
尻尾を切られた黒猫は、夜にしか出歩かない。独りの散歩をしたい時は少女に気がつかれないようにそっと少女から離れるのだが、少女は勘がよい上に四六時中黒猫の尻尾を握りしめたままだから、大抵の場合気付かれてしまう。
何故なら、ヌバタマが散歩に出掛けたいと思うと、少女の手の中の尻尾もまた落ち着きなくぴくりぴくりと動いてしまうのだ。
まだまだ修行が足りないと苦笑いしながらも、そんな時の尻尾は月光に照らされ、黒い毛並みが艶やかに際立つから、黒猫は我ながら見惚れてしまう。
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