懸恋-keren-
超短編
2009年1月25日日曜日
流星群の夜
「動かないで。目を閉じて。耳を澄ませて。このまま……」
少女の足音が遠ざかる。
冬の夜。尻尾を切られた黒猫は往来の途中で(といっても、そこは塀の上であった)突如置き去りにされた。少女はもう大分遠くに離れた。動くことはたやすいが、もう暫く少女の言う通りにしてみようと考えた。
耳を澄ませて、と言われたから、耳を澄ませたままでいる。
時折、流星が走り抜ける音がする。ヒゲからも毛からも。
耳だけを澄ませるのは、なかなか難しいことだ、と黒猫は考える。
まだ少女は戻らない。
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