懸恋-keren-
超短編
2009年1月16日金曜日
欠けた満月
月の様子がおかしいのに真っ先に気がついたのは、尻尾を切られた黒猫だった。黒猫は少女に問う。
〔キナリ、今夜は満月ではないのか?〕
「え?」
黒猫は毛を逆立て、エメラルドの瞳で射るように月を見上げている。
少女はにわかに不安になる。満月が齧られたように欠けているのだ。
少女の不安は的中した。暫くしてやってきた月は頭に大きな絆創膏をしていたのである。
「ナンナル! その怪我どうしたの?」
「参ったよ。このご時世に月はチーズで出来ていると信じるネズミがあんなに大勢いるとはね!」
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