2009年1月16日金曜日

蹴飛ばせ!

自転車を素手で駐輪場に運ぶ。冬の夜の自転車は、氷よりも冷たい。
パズルのように自転車を並べていく。駐輪場がいっぱいになると、今度は自転車の上を自転車を抱えて飛び歩き、累ねていく。

夜中にだけ出現する美しく輝く自転車ピラミッド。鼠たちの秘密の遊園地。

朝になれば、また自転車は出ていく。だが、この絶妙なバランスで積み上げられた自転車を取り出せる奴なんかいない……俺以外に。

だから朝の人々は、自転車を一斉に蹴飛ばすのだ。自転車のピラミッドは儚く崩れ落ちる。大音響と鼠の糞を浴びて、美しくもない自転車の山から一台を引きずり出して跨がり、世間様とやらに分け入っていく。俺は仕事明けの旨い酒を呑みながらそれを眺める。いい気味だ、お天道様が眩しいぜ。