彼は抹茶色の風呂敷に白い団子を包み始めた。
「結び方によって出てくる物が違うんだ。何が欲しい?」
「チーズケーキ」
「オッケー」
彼はなめらかな手付きで花のような結び目を作るとそこに目を閉じてキスをした。
その横顔を見ていたらニガイものが胸に広がっていった。
「開くよ…ほら、おいしそうだ」
私は紅茶をいれる。紅茶をいれるのだけは上手にできるから。
チーズケーキを食べ終わると風呂敷を指して私は言った。
「これ、わたしもやってみたい」
「いいよ」
白い団子を包み、何度も何度も固く結んだ。
ギチギチの結び目はみっともない固まりになった。
彼の真似をして目を閉じ、唇を近づける。
うまくできたかしら。
「さぁ、ほどこう。何ができたかな?」
彼は結び目に手をかける。
でも解けなかった。
どうしても、何をしても、結び目はみっともない固まりのまま。
彼はちょっと怒ったような困ったような顔して私にキスをした。
彼の唇はあたたかかった。
ようやく私の心は満たされたのだった。
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500文字の心臓 第32回タイトル競作投稿作
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