2003年11月30日日曜日

阿礼のこと

「あんちゃん、あれっく、あそこにいるよ。」
アレックこと、阿礼は街路樹を背もたれにしてしゃがみこんでいた。
黒い服と黒い帽子。傍らには百科事典と虫眼鏡。
「こんにちは、アレック」
主水くんが声をかけると阿礼はいつもと同じ調子で言った。
「各々方、よくぞ参った。各々方に小生の知識を分け与えて進ぜよう」
「では、ルーシーについてを教えて下さい」
「ルーシーについてはこのデラックス百科事典の9753頁に記されておる。されども、小生に百科事典は必要ない」
ならば、そこの分厚い本は何だ、などという野暮な質問はしてはならない