ぼく以外のみんなに緊張が走ったのは
ココナッツシガレットのお代を払おうとした時だった。
財布を上着から出したその時、ポケットから落ちた物があった。
「え?なに?どうしたの?」
小父さんは答えず、そぅっとそれを拾いあげ
舐めるように眺めた後、ため息とともに言った。
「だいじょうぶ」
ピーナツ売りもフクロウも、息を吐いた。
「少年、これは私だ」
小父さんがつまんでいるのは、小さなまんまるの石だった。
「これがないと私は帰れない。そして絶対に傷つけてはならないのだ。」
小父さんの視線の先には、まんまるお月さま。