2003年6月11日水曜日

月光密造者

「この瓶に彼の吸い殻を入れてきてほしい」
突然話し掛けてきた男は、フラフラしていた。
渡されたのは、瓶というよりランプのような代物だった。
その晩、ハニーシガレットを喫む小父さんは機嫌がよく、ぼくたちは寂しい道化師に会いにいった。
パントマイムを見終わり拍手を送る時、小父さんの口から煙草が落ちた。
ぼくはすばやく瓶を真鍮の枠から外し、吸い殻を入れた。ジュッと音がした。

翌日、男に瓶を渡すと喜んだ。
「これで酒が旨くなるのさ、月はエライ目にあうがな」
その晩会った小父さんは、まっ赤だった。
もちろん、月も。