ココアが飲みたいと大騒ぎする小父さんのために
アイスココアを作った。
小父さんは「おいしい、おいしい」を連発して飲み干さない内に
外へ出てコウモリを呼び、コウモリ傘を差してどこかへ飛んでいってしまった。
「どこにいっちゃったんだろ」
{なぁに、すぐに戻ってくる}
フクロウが言った通り、30分ほどで小父さんは戻ってきた。
「一体私は何をしていたんだろう?」
「覚えてないの?」
{ココアにいたずらされたのだ}
すると小父さんのグラスに残っていたココアが笑いだした。
それはそれはうるさくて、頭が痛くなったよ。
2003年6月27日金曜日
THE MOONMAN
「たとえば小父さんに手紙を書きたい時、宛名はどうすればいいの?」
「妙なことを言う奴だな。こうして毎晩会っているではないか」
「だから、たとえばの話だよ」
「TO THE MOONMAN」
「それ、小父さんの名前?」
「名前?名前ではない。私に名前はない」
「……ふーん。それでポストに入れたら届くの?」
「そうだ。私宛ての手紙があることをポストがフクロウに伝える」
「届けるのは郵便屋さんじゃないんだね」
「彼らが私の所に来られると思うか?」
小父さんが帰ってからぼくはカードを書いた。
バースディパーティーの招待状。
「妙なことを言う奴だな。こうして毎晩会っているではないか」
「だから、たとえばの話だよ」
「TO THE MOONMAN」
「それ、小父さんの名前?」
「名前?名前ではない。私に名前はない」
「……ふーん。それでポストに入れたら届くの?」
「そうだ。私宛ての手紙があることをポストがフクロウに伝える」
「届けるのは郵便屋さんじゃないんだね」
「彼らが私の所に来られると思うか?」
小父さんが帰ってからぼくはカードを書いた。
バースディパーティーの招待状。
2003年6月26日木曜日
はたして月へ行けたか
「あの人は本当に月から来て月へ帰るのか?」
とある人に聞かれた。
あまりにも真剣な眼差しで、ぼくは怖じ気づいてしまった。
「ぼくは月まで行ったことないから……」
するとその人は言った。
「ならば私が確かめてこよう」
その時、空を睨み上げ、拳を握りしめるのをぼくは見たんだ。
それからその人には会っていない。
一度小父さんに
「小父さんを空まで追いかけて来た人がいなかった?」
と聞いてみたけど笑い飛ばされただけだった。
あの人のことが忘れられない。なぜだろう。
とある人に聞かれた。
あまりにも真剣な眼差しで、ぼくは怖じ気づいてしまった。
「ぼくは月まで行ったことないから……」
するとその人は言った。
「ならば私が確かめてこよう」
その時、空を睨み上げ、拳を握りしめるのをぼくは見たんだ。
それからその人には会っていない。
一度小父さんに
「小父さんを空まで追いかけて来た人がいなかった?」
と聞いてみたけど笑い飛ばされただけだった。
あの人のことが忘れられない。なぜだろう。
2003年6月25日水曜日
2003年6月24日火曜日
水道へ突き落とされた話
頭が痛かった。のっそりとベッドから這い出て洗面台に向う。
痛みが流れるわけではないのに、ジャバジャバと顔を洗い続けた……気が付くとぼくは水と共に流れていた。
始めは驚き、焦って手足をバタバタと動かしていたがやがてあきらめて流れに身を任せた。
するとまもなく穏やかな気持ちになった。
このトンネル(おそらく下水道)を抜けると川に出て海に行くんだ。
ぼくは再び気を失った。
目が覚めると潮の香がした。いよいよ海だ。
ぼくはドキドキしてきた。あぁ、満月が綺麗だ。
「起きろ!少年。もう少しで水になるところだったぞ」
痛みが流れるわけではないのに、ジャバジャバと顔を洗い続けた……気が付くとぼくは水と共に流れていた。
始めは驚き、焦って手足をバタバタと動かしていたがやがてあきらめて流れに身を任せた。
するとまもなく穏やかな気持ちになった。
このトンネル(おそらく下水道)を抜けると川に出て海に行くんだ。
ぼくは再び気を失った。
目が覚めると潮の香がした。いよいよ海だ。
ぼくはドキドキしてきた。あぁ、満月が綺麗だ。
「起きろ!少年。もう少しで水になるところだったぞ」
2003年6月22日日曜日
2003年6月21日土曜日
星でパンをこしらえた話
「星を拾いにいきたい」
「この前行ったばかりだろう」
「いいからいいから」
ぼくは一晩かけて大量の星を拾った。
何も知らない小父さんは退屈そうだったけど。
翌日、ぼくは星を丁寧にこねて、オーブンに火を入れた。
夕方、小父さんの前でオーブンを開く。
おいしい香りが部屋に広がる。成功だ。
星でできたパンは大きくてまんまる。お月さまみたい。
小父さんは目を丸くした。
星でパンを作るとは思ってもみなかったみたいだ。
焼きあがったパンを持って友達に会いにいこう。
ピーナツ売りや黒猫、道化師やマネキンにもおすそわけ。
「この前行ったばかりだろう」
「いいからいいから」
ぼくは一晩かけて大量の星を拾った。
何も知らない小父さんは退屈そうだったけど。
翌日、ぼくは星を丁寧にこねて、オーブンに火を入れた。
夕方、小父さんの前でオーブンを開く。
おいしい香りが部屋に広がる。成功だ。
星でできたパンは大きくてまんまる。お月さまみたい。
小父さんは目を丸くした。
星でパンを作るとは思ってもみなかったみたいだ。
焼きあがったパンを持って友達に会いにいこう。
ピーナツ売りや黒猫、道化師やマネキンにもおすそわけ。
2003年6月20日金曜日
自分を落としてしまった話
やってきた小父さんは真っ青だった。
ここに来る途中、自分を落としたらしい。
いつもは送り迎えの時しか現れないコウモリも慌てていた。
とにかくあれを見付けないければ!
傷がつけば小父さんの身体も、空の月も大変なことになる。
もはや小父さんは不安で倒れそうだ。
小父さんにはココアを飲ませ、ぼくのベッドに休ませた。
コウモリに小父さんを見てもらうことにして
フクロウとぼくで探しに行く。
でも一体どこを探したらいいのだろう。
早く見つけたいのに見当もつかない。
ぼくは腕組みした。
すると胸ポケットに何か入っているのに気付いた。
小さなまんまるの石。
ポケットの中の月はやっぱりポケットが好きらしい。
ここに来る途中、自分を落としたらしい。
いつもは送り迎えの時しか現れないコウモリも慌てていた。
とにかくあれを見付けないければ!
傷がつけば小父さんの身体も、空の月も大変なことになる。
もはや小父さんは不安で倒れそうだ。
小父さんにはココアを飲ませ、ぼくのベッドに休ませた。
コウモリに小父さんを見てもらうことにして
フクロウとぼくで探しに行く。
でも一体どこを探したらいいのだろう。
早く見つけたいのに見当もつかない。
ぼくは腕組みした。
すると胸ポケットに何か入っているのに気付いた。
小さなまんまるの石。
ポケットの中の月はやっぱりポケットが好きらしい。
2003年6月19日木曜日
ガス燈とつかみ合いをした話
ぼくはガス燈によりかかってフクロウを待っていた。
一緒にピーナツ売りに会い行くことになっていたのだ。
「まだかなぁ、フクロウ」
「当分来ないよ」
ん?
「重いからどいてくれよ」
背中を押されて転んだ。
ガス燈を見上げて、ぼくは青くなった。ぐったりとしたフクロウがぶらさがっている。
「フクロウに何をした!」
ぼくはガス燈に登ろうとしたが、振り落とされて身体を強く打った。
参ったな…
そこへ、遅いのを心配したピーナツ売りが来てくれた。
ニヤリと笑うとピーナツ売りはキリンを出した。
フクロウは無事に助けたよ。
一緒にピーナツ売りに会い行くことになっていたのだ。
「まだかなぁ、フクロウ」
「当分来ないよ」
ん?
「重いからどいてくれよ」
背中を押されて転んだ。
ガス燈を見上げて、ぼくは青くなった。ぐったりとしたフクロウがぶらさがっている。
「フクロウに何をした!」
ぼくはガス燈に登ろうとしたが、振り落とされて身体を強く打った。
参ったな…
そこへ、遅いのを心配したピーナツ売りが来てくれた。
ニヤリと笑うとピーナツ売りはキリンを出した。
フクロウは無事に助けたよ。
2003年6月17日火曜日
2003年6月16日月曜日
TOUR DE CHAT-NOIR
「こないだ箒星獲りにいったところに行きたい」
「あぁ、黒猫の塔か」
「黒猫の塔って言うの?」
「そうだ。あの塔はとっても、古い。そしてあぶない」
「でもこの前は登ったよ?」
「それは箒星を獲らなくてはならなかったからだ」
問答の末、なんとか塔へ連れていって貰った。
小父さんをベベに残し塔の中に足を踏み入れると冷たい風が背中をくすぐった。
「いらっしゃい」
「あ!黒猫さん!この前は会わなかったのに」
「お月さんがいたからね」
「……仲悪いの?」
「そうじゃない。これはお月さんには内緒だよ……」
黒猫とおしゃべりして車に戻り小父さんに言った。
「また来たい!」
「やれやれ」
「あぁ、黒猫の塔か」
「黒猫の塔って言うの?」
「そうだ。あの塔はとっても、古い。そしてあぶない」
「でもこの前は登ったよ?」
「それは箒星を獲らなくてはならなかったからだ」
問答の末、なんとか塔へ連れていって貰った。
小父さんをベベに残し塔の中に足を踏み入れると冷たい風が背中をくすぐった。
「いらっしゃい」
「あ!黒猫さん!この前は会わなかったのに」
「お月さんがいたからね」
「……仲悪いの?」
「そうじゃない。これはお月さんには内緒だよ……」
黒猫とおしゃべりして車に戻り小父さんに言った。
「また来たい!」
「やれやれ」
2003年6月15日日曜日
AN INCIDENT IN THE CONCERT
コンサートに行くからと小父さんは服をくれた。
「これ着るの?」
「そうだ」
「はずかしいよ」
しばらく抵抗してみたが結局着て出掛けた。
きまり悪いままホールに着いた。
静かに幕が上がる。
初めて見る楽器だらけで、ぼくは夢中になった。
あの楽器はどの音だろう?どうやって音をだすんだろう?
気付くと横にいるはずの小父さんが、いない。
ぼくは不安になった。でも立ち上がるわけにはいかない。
とうとう全ての演奏が終わった。他の観客は帰り、広いホールにぼくはひとりぼっちになった。
そしてアンコールが始まった。
「これ着るの?」
「そうだ」
「はずかしいよ」
しばらく抵抗してみたが結局着て出掛けた。
きまり悪いままホールに着いた。
静かに幕が上がる。
初めて見る楽器だらけで、ぼくは夢中になった。
あの楽器はどの音だろう?どうやって音をだすんだろう?
気付くと横にいるはずの小父さんが、いない。
ぼくは不安になった。でも立ち上がるわけにはいかない。
とうとう全ての演奏が終わった。他の観客は帰り、広いホールにぼくはひとりぼっちになった。
そしてアンコールが始まった。
2003年6月13日金曜日
2003年6月12日木曜日
箒星を獲りに行った話
ぼくはワクワクしていた。
「明日は箒星を獲りに行くぞ。弁当を用意しておけ」
と小父さんに言われて、サンドウィッチを作り
ジュースも用意してバスケットに詰め、迎えを待った。
夕暮間近になって現れた小父さんは、ちょっと厳しい顔で、ぼくは緊張した。
ぼくたちはベベに乗り走った。
「あれに登るぞ」
小父さんが指差す先には夜空に刺さる程高い塔があった。
実際は塔に昇るのはそれほど大変ではなかったし、箒星もたくさん獲れた。
塔の上で食べるサンドウィッチもおいしかった。
でも小父さんは高いのはイヤだとずっと震えていた。
「明日は箒星を獲りに行くぞ。弁当を用意しておけ」
と小父さんに言われて、サンドウィッチを作り
ジュースも用意してバスケットに詰め、迎えを待った。
夕暮間近になって現れた小父さんは、ちょっと厳しい顔で、ぼくは緊張した。
ぼくたちはベベに乗り走った。
「あれに登るぞ」
小父さんが指差す先には夜空に刺さる程高い塔があった。
実際は塔に昇るのはそれほど大変ではなかったし、箒星もたくさん獲れた。
塔の上で食べるサンドウィッチもおいしかった。
でも小父さんは高いのはイヤだとずっと震えていた。
2003年6月11日水曜日
2003年6月10日火曜日
2003年6月9日月曜日
2003年6月8日日曜日
2003年6月6日金曜日
2003年6月5日木曜日
2003年6月4日水曜日
THE MOONRIDERS
「少年、外へ出るぞ」
突然、小父さんは飛び出して行った。
外には白いバイクにまたがった人がたくさんいた。
ぼくは驚いて小父さんの影に隠れる。
「恐がることはない、彼らはムーンライダーだ。みんなで街を走るぞ」
小父さんは、一番大きなバイクに乗った。ぼくはその背中にしがみつく。
「出発!」
何十もの白いバイクが真夜中の街を音もなく駆け抜ける。
でもすごい風だ。白い一隊が通ると街路樹もガス燈も大きくしなる。
「アタシも乗せてー」
と叫ぶのはマネキン。ワンピースがお腹まで捲れあがっている彼女に、ぼくは手を振った。
突然、小父さんは飛び出して行った。
外には白いバイクにまたがった人がたくさんいた。
ぼくは驚いて小父さんの影に隠れる。
「恐がることはない、彼らはムーンライダーだ。みんなで街を走るぞ」
小父さんは、一番大きなバイクに乗った。ぼくはその背中にしがみつく。
「出発!」
何十もの白いバイクが真夜中の街を音もなく駆け抜ける。
でもすごい風だ。白い一隊が通ると街路樹もガス燈も大きくしなる。
「アタシも乗せてー」
と叫ぶのはマネキン。ワンピースがお腹まで捲れあがっている彼女に、ぼくは手を振った。
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