懸恋-keren-
超短編
2008年4月23日水曜日
お見送り
時折、私の前に踊る者が現れる。
道端で知らない踊る人に遭遇したり、知り合いが突然踊って見せたりする。
踊る者たちは、ひとしきり踊りそのまま去っていく。私は、踊る者が舞散らかした踊りの粒子を吸い込む。
「世の中には踊る者と踊りを見る者がいる」
と祖母は言っていた。そして、こう続けた。
「あなたは踊りを見る者だ。踊らずにはいられない者を見届けなさい」
と。
踊る者である祖母は、死んでからも踊り続けて、踊りながらあの世に旅立った。
私は踊りを見る。見届ける。見送る。そうしないではいられないから。
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