あなたが赤いから、私は緑になるよ、と彼女は言った。僕の一体何が赤いというのだろう。
彼女は、いつも僕と反対であろうとする。
僕が暖かいと言えば、彼女は寒いと言った。
嬉しいと言えば悲しい。
プラスと言えばマイナス。そう、彼女はいつだってフラットな状態を望んだのだ。二人が合わさってゼロになることを。それが恋人同士のあるべき姿だから、と。
でも、僕が赤くて彼女が緑はどうしてもわからなかった。赤と緑、補色関係。たしかに絵の具を合わせれば黒くなるけれど、それは何を指す?
彼女の言ったことは本当だと、今わかった。
さっき料理をしていた彼女が指を舐めて出てきた。包丁で切ったという切り傷からは緑色の液体が溢れ出ているのだ。
僕は何も言わずに絆創膏を貼る。