懸恋-keren-
超短編
2008年4月29日火曜日
コンクリート
コンクリートの亀裂から生まれた魚は、棲みかを求めてぴちぴちと跳ねる。
アスファルトを跳ねながら進むと身体は傷ついたが、道路脇の花壇の土はもっと苦しいので、魚は道路を進むことにした。
魚はどんな棲みかを求めているのか自覚がない、それを見ればきっと自分の住むべき場所だとわかるだろうと確信していた。亀の子だって海を見つけるのだ。
「いい匂いがする」
魚が辿りついたのは、ガソリンスタンドだった。零れたガソリンの水溜りに、魚は嬉々として飛び込む。
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