2008年4月11日金曜日

誰かのため息

声をあげて笑うと、耳のすぐ側で女のため息を感じるようになった。吐息が耳にくすぐったくて、というより艶めかしくて、慌てて振り向くのだけれど、誰もいない。
もしかしたら、幽霊にでも憑かれたのかもしれない、と霊感があるという友人の友人にも相談したが、幽霊のユの字もないと断言された。
何も憑いていないと言われ、ため息の謎は深まったが、安心したのも確かだ。いつの間にか、ぼくはため息を楽しむようになった。
前は全く見なかったお笑い番組を毎晩見る。
夜な夜な薄暗い部屋で、ゲラゲラと笑いながら、切ない吐息を耳に感じて身悶える。ぼくが大声で笑えば笑うほど、ため息は切なく艶を増すのだ。
わかってる。幽霊に取り憑かれているより、質が悪い。