懸恋-keren-
超短編
2008年4月12日土曜日
うすべに
薬指で、薄く紅をひく。
薄く、だが紅く。そしてコケティッシュに。
注意深くヘアピンを脣で挟み、髪をゆるく結う。
寝間着も下着も脱ぎ、まだ袖を通したことのない白い着物を羽織る。
鏡を見遣る。少し開いた紅い脣が物欲げだ。
脣がひりひりと痛む。脣を舐めそうになるのを堪え、今度は中指に紅を取る。最後の手淫をはじめる。もう十分に滑っている。
男がなんという毒を紅に混ぜたのか知らない。
私はただ、男を想いながら紅を舐めるのみ。
次の投稿
前の投稿
ホーム