2005年4月26日火曜日

TOUR DU CHAT-NOIR

〔キナリ〕
しっぽを切られた黒猫が少女を呼ぶ。
「なに?」
〔今夜、集会がある〕
「集会?」
〔黒猫の集会〕
「キナリも行きたい」
〔それはあんたが決めることだ〕
黒猫は、いつもの倍のミルクを飲み、いつもの倍、毛繕いをして出て行った。
少女は後を追う。黒猫が塀に上がれば、同じようにした。穴をくぐれば、同じようにした。
公園には、何百もの黒猫が集っていた。太ったのや痩せたの、しっぽが長いのや短いの、片目が潰れたのや足を引きずるもの、あらゆる黒猫がいたが、しっぽを切られた猫は一匹だけである。少女はブランコに腰掛け、黒猫たちの様子を眺める。
やおら一匹の黒猫が一匹の黒猫の背中に飛び乗った。その上にまた一匹が飛び乗る。さらにその背中に一匹。
それは何百回と繰り返され、最後にしっぽを切られた黒猫が飛び上がった。それを見て、少女は鬼のアパートへ向かって駆け出した。
最上階の鬼の部屋の窓から見上げても、頂点は見えない。
「ヌバタマ~!」
少女が叫ぶと、黒猫の目が一斉に光った。