2005年4月17日日曜日

ポケットの中の月

「キナリ、ポケットに手を入れていると、転んだとき危ないぞ」
「へへーん。ポケットの中にはお月さんが入っているんだよ」
少女はスボンのポケットに入れたまま右手を動かす。
「なんだって?!」
月は狼狽する。
「見たい?」
少女はニヤリとする。
「早く見せろ」
「どうしようかな」
少女がポケットの中で右手を動かす。月が顔を歪める。それを見てますます右手を動かしてみせる少女。
無言の攻防の後、ついに右手が引き出された。
「これだよ。オニにもらった」
少女の手の平には飴玉がひとつ。
包み紙には小さな文字。
〔candy‐moonひと粒で月まで飛んじゃうおいしさ!りんご味〕