その晩、長い名の絵かきの姿はなかった。イーゼルもキャンバスも絵の具も椅子も、いつもの場所にある。
「プキサはどこに行ったのだろう、大事な道具も置きっぱなしで…椅子はまだ温かいな。キナリ、プキサはまだ近くにいるはずだ。捜そう」
月と少女は辺りを見回す。
「あ!」
「見つけたか?」
「ナンナル!大変だよ!ピベラ・デュオガ・ハソ・ヘリンスセカ・ド・ピエリ・フィン・ノピメソナ・ミルイ・ド・ラセ・ロモデェアセ・スペルイーナ・ケルセプン・ケルセプニューナ・ド・リ・シンテュミ・タルヌヂッタ・レウセ・ウ・ベリンセカ・プキサはこのチューブの中だよ!」
イエローのチューブが膨れあがり、もぞもぞと動いている。
月と少女はパレットに黄色い絵の具を慎重に押し出した。中の絵かきを潰さないように。
絵の具がなくなって、最後に絵かきが出てきた。
「ありがとう、ありがとう」
絵かきは全身黄色のまま言った。
「でも黄色の絵の具がなくなっちゃったよ」
パレットの山盛りイエローを差し出して少女が言う。
絵かきは笑った。
「大丈夫!見て、今夜は満月だ。みんなで月を描こうよ」