しっぽを切られた黒猫の毛が、じっとりと重い。
「今夜は霧が深いな、ヌバタマ」
黒猫を撫でながら、月が溜め息をつく。黒猫は返事をしない。
少女は滑り台で遊んでいる。細かく濡れた遊具は、いつもとは違う遊びを思いつかせるらしい。何度も繰り返し、滑らない滑り台を昇り降りしている。
「キナリ、そろそろ帰るぞ」
月は黒猫を抱いて少女に寄る。滑り台から降りてきた少女は言った。
「あれ?ヌバタマは」
「ヌバタマならば、私が」
〔ここにいる〕
黒猫はクスノキの枝から飛び降りてきた。
月が抱いていたのは、カボチャであった。