懸恋-keren-
超短編
2008年7月8日火曜日
ミュータント
鳥かごの様子がおかしい。覗きに行くと、オカメインコの岡田くんの羽が手になっていた。鳥かごの中でパタパタと羽ばたくのが好きな岡田くんは、急に上手く羽ばたくことができなくなって、ひどく戸惑っていた。
岡田くんの手はきちんと動いた。ちゃんと指でものを掴める。翼がそっくり手になっているから、うずくまると、ほっそりとした少年の手にくるまっているような佇まいで、美しかった。
私は岡田くんの手に恋をしてしまったのだ。
鳥かごから岡田くんを出して、私はその手に唇を寄せる。
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