懸恋-keren-
超短編
2008年7月16日水曜日
星の終わり
それはひっそりと、誰にも気づかれることがないはずだった。今生の別れの涙を一粒落としたばっかりに、川原を歩いていた少女に知れてしまった。
少女は突如降ってきた星の涙を拾いあげると天を見上げて首を傾げる。それもそのはず、星が消えたと気づいても、広い夜空の、一体どの星が消えたかを特定することがどんなに難しいか。
少女は、さっきまで夜空にあったはずの星を探すことは諦めた。そして、星の涙に口づけてから、てのひらに載せてふっと息を吹き掛ける。
星の涙はたちまち溶けて、少女の肌に染み込んでゆく。
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