クローゼットの一番下の抽斗に一枚だけ入っている、細かい花柄のスカートを、俺は慌ただしく穿く。堪えがたい衝動を宥める必要はない。
スカートを穿き、くるりと回る。ひらりと翻る。
くるくると回る。ふわふわと、あの娘の匂いが漂う。
スカートを顔を当てて思い切り息を吸い込んでも、決して嗅ぐことができない、あの娘の匂い。だから俺は、回り続ける。
回り続けて、回り続けて、あの娘の香りでいっぱいになる。此処にいるのはわかっているのに、すぐにでも抱きしめたいのに、何故か回るのを止められずに、気を失ってしまう。目が回る前に、逢いたいよ……。
わたしは彼をもとめて部屋を見渡す。脱ぎ捨てられたばかりのシャツを拾いあげて抱きしめる。どうして会えないのか、わからないけれど、ついさっきまで彼は此処にいたのね……。
穏やかな気持ちで、わたしは眠りにつく。彼のベッドの大きなで枕で。