「足の裏に行ってみないか?」
と言うそばから、貴様は足をずるりんと裏返してしまうから、もうここは足の裏の世界なんである。
足の裏の世界といっても、臭くはない。貴様は案外よく足を洗っているとみえる。結構なことである。
貴様は度々こちらに来ているのか、慣れたふうに足を頭に、頭を足にして歩いている。
俺様は育ちがいいから、そんなことはできない、と思っていたが、貴様に鏡を見せられた。やはり、足を頭にしているんである。
しばらく散策していると、水虫男が現れた。俺様は動揺して「を、をい、どうするんだ」と言うと、貴様はにやりと笑って、懐から水虫薬を取り出して、水虫男に塗りたくっていた。
水虫男が「あ、そんな。ゆるして」と甲高い声を出すので俺様も水虫薬を塗りたくってやった。
貴様が「そろそろ帰るか、頭の裏の世界に」というが早いが、水虫薬でぬらぬらしている手を口に突っ込み、ずるりんと裏返してしまった。