強い日差しの中、バスを待っていた。
汗を減らせるわけではないが、じっと下を向いていた。
急に、影が踊りだしたのだった。
私は自分がじっと動かずに立っていることを確かめなければならなかった。
影が踊っているからには、自分も踊っているはずだ。
暑さにやられて体が勝手に動いたのかもしれない。
しかし、やはり私は下を向いて立っているだけだった。
「影が退屈してたからね」
しゃがれた声に振り向くと黒いタクトを持った老人がいた。
「動きたくてウズウズしてたよ」
「どうもご親切に…」
老人がタクトを振ると影はくるりとお辞儀をした。