懸恋-keren-
超短編
2004年7月26日月曜日
地図
新しいジーンズを履いたらお尻の右側がもぞもぞと動く。おまけになんだか湿っぽい。
慌てて脱ごうとしたが、新品のジーンズは硬くてきつい。
やっとのことで脱ぐと、右後のポケットから小さな雨雲が出てきた。
雲はすこしずつ大きくなっているようだった。
「そうだ、おまえに仕事をやろう」
私は世界地図を持ってくると水不足の地域に赤鉛筆で印を付け、クルクルと丸めて雲に突き刺した。
「ここに行って雨を降らせておくれ」
しかしその瞬間、雲は霧になって消滅した。丸まった地図が床に落ちた。
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