懸恋-keren-
超短編
2004年7月19日月曜日
天使の影
天使の影を踏んでしまった。
ずいぶん年老いた天使のようだった。アスファルトに映った黒い翼はボサボサだったし、しわがれ声で「痛い……」と言うのが聞こえた気がする。
天使の影を踏むとどうなるかなんて、ぼくは知らない。なにか災いが起こるかもしれないと思って、図書館にも行ったし、町の物知りにも訊ねた。
でも何もわからなかった。つまり、それは何も起こらないということを意味するんだ、たぶん。ぼくは安心してベッドに潜った。
翌朝、ぼくの影には翼が生えていた。
悪くない災いだ。
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