懸恋-keren-
超短編
2004年7月25日日曜日
チョコレート
最寄り駅に着いたぼくは定期券を出そうと背広の内ポケットに手をやり、ぎょっとした。
恐る恐る見ると手には溶けたチョコレートがべったりついていた。
「あ、おいしそう」とそばにいた高校生の女の子が近付いてきて、ペロペロとぼくの手を舐めはじめた。
ぼくはそのまま女の子に手を舐められながら電車に乗ったが、まわりの人はみな知らんぷりをしていた。
ようやくチョコレートを舐めおわった女の子が「ごちそうさまでした」と丁寧に言うので
思わず「おそまつさまでした」と言ってしまった。
車内にホッとした空気がながれた。
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