山田さんとは仕事の関係で知り合った。
「山田、と申します……」
差し出された名刺、添えられた手、お辞儀の角度で彼の人柄はすぐにわかった。
それに気付いたのは見送りのエレベーターだった。生真面目な彼はこちらに向いたまま後ずさりでエレベーターに乗り込んだ。エレベーターの鏡には真っ黒なシルエットしか映っていなかった。「
山田さん!」
私は閉じかけた扉を無理矢理開け乗り込んだ。
「ご心配なく。これは私の影です。地面を歩くのも光の角度で伸び縮みするのも面倒だと言って、等身大の私の姿で背中に張りついておるのです」