懸恋-keren-
超短編
2004年7月16日金曜日
介錯
夢の中でぼくは、ぼくの影だった。
影になったぼくは、ぼくと光を注意深く観察し、姿を変えることに撤した。
影になったぼくは、ぼくの媚びた仕草、みっともない動作、無駄な足踏み、いやらしい手つきに心底あきれ、蔑んだ。
そして、それをすべて写し取らなくてはならない己を激しく嫌悪した。
目が覚めた時、ぼくはまっさきに自分の影に目をやった。
起き上がると鋏をつかみ、絨毯に映る影を切り取った。
「今、ラクにしてあげるよ」
身体中から、血が吹き出るのも構わずに。
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