2004年7月6日火曜日

ルミちゃんとハナちゃん

ちょっとおかしいのかしら、といつもはのんきなお母さんが心配するほど
四歳になる娘のルミちゃんのお人形遊びは熱が入っていました。
ルミちゃんは、ルミちゃんのおばぁちゃんがプレゼントしてくれたお人形を「ハナち
ゃん」と呼び、毎日のように遊んでいます。
ルミちゃんは、ほかの子と違い「ハナちゃんのセリフ」を決して言いません。
ルミちゃんはハナちゃんに何やらお伺いをたてたり、意見を述べたりするだけです。
もっとおかしいことがあります。
ルミちゃんはまったく、ハナちゃんの顔を見ないのです。
ルミちゃんはうつむいたり、どこか遠くを見ているような顔つきで、ハナちゃんに話しかけています。
お母さんは、注意深くルミちゃんがハナちゃんと遊ぶ様子を見てみることにしました。
「ハナちゃん、ルミは今日幼稚園で、お花の絵を書いたよ」
ルミちゃんはハナちゃんを小さな椅子に座らせ、部屋の白い壁に向かって話しかけています。
お母さんは壁をよく見ました。何もありません。
「あら」
白い壁にはハナちゃんの影がくっきり映っています。
ハナちゃんの影は生き生きと動き、ルミちゃんとおしゃべりしているのがわかります。
お母さんは安心しました。ルミちゃんはどこもおかしくなんかありません。