「あの、落としましたよ」
「これはこれは。ご親切にありがとう」
ぼくがおじさんの背広のポケットから落ちたものを拾って渡すと、おじさんはとてもうれしそうに笑った。
「変だと思うかい?坊や。こんなおじさんが人形をポッケに入れて歩くなんて」
ぼくはうなずく。
おじさんがポケットから落としたのは赤茶色の毛糸を三つ編みにした、綿入れのお人形だった。
「お礼にごちそうしよう」
おじさんはソフトクリームを三つ買ってひとつをぼくにくれた。
そしてひとつをお人形が入っているポケットに突っ込み、最後のひとつを自分で舐めた。