主水くんがなかなか戻ってこないので皆、様子を見に来た。
「あ、博士。この人が 壁の蝋燭を付けてまわっている人です。」
「そりゃご苦労なことで」
「どうでっしゃろ。あいせっふぁいあ と きんど」
「千本もあるんですって、蝋燭」
「それは前に数えたから知ってる」
「はぁ、そうですか。この蝋燭、一時間持つそうですよ」
「じゃあ、千本目の火を付けたころ、一本目はもう消えてるんじゃないかしら?」
百合ちゃんが言ったが、火付け人は聞こえなかったらしい。
「千本目の火を付けるときには、一本目はどうなってるんですか?」
「右壁、左壁かわりばんこにえっほ、えっほ。全部終わるのに45分後、戻ってくるのに15分。あいせっふぁいあ と きんど」
火付けはこの科白を何度も言っているのだろう、よどみなく歌うように口にした。
「すごい。ちょうど一時間だ。でも、それじゃぁ休む時間がないじゃない!」
摩耶が大きな声を出した。
「どうでっしゃろ。あいせっふぁいあ と きんど」