懸恋-keren-
超短編
2004年1月20日火曜日
桃
夏だというのに、この町の海岸通りは閑散としていた。
むこうから娘が歩いてくる。
ビーチサンダルに切りっぱなしのデニムの短パン、よれよれのタンクトップ。
髪はばさばさ。年は15にも25にも見える。
娘は歩きながら桃にむしゃぶりついていた。
ボタボタと汁を滴らせて。
すれ違いざまに感じたむせかえりそうな甘い匂いは、果して桃のものだったか、女のものだったか。
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