大通りの花屋と靴屋の間には大きな四角い穴がある。
店舗がぴっちり立ち並ぶ大通りにあってその隙間はあきらかにテンポを乱している。
余所の人がそうと知らずにのぞき込み、足を踏み外して怪我をする事故も後を断たない。
ゆえに通称「落とし穴」。
実はこれが劇場への入り口なのだ。
石でできた長い階段を降りて暗い地下通路を15分ほど行くと、劇場だ。
掃部くんがここに入るのは初めてである。
通路は三人歩くのがやっとくらいの幅で、天井も低い。
両側の壁には6尺ごとに蝋燭が灯されているが、それでも相当に暗い。
五人の足音がカン カンと響きわたる。