私はピーマンが嫌いだった。
それはもう病的に。
自分でもどうかしてると思うくらいに。
ピーマンを食べて具合が悪くなったこともなければ、味や匂いがイヤなのでもない。
でも食べられない。
ピーマンを食べるということは、恐ろしく、汚らしく、忌まわしい。
拒絶、嫌悪。ただそれだけ。
ある日、道で女に声を掛けられた。
近寄ってくる女に、なぜだかいい香りを感じた。
「あなた、ピーマン食べられないでしょ」
「え?はぁ。そうですけど」
「私たち、同士ね」
「どういうことですか?」
「私はピーマン星の生き残りの子孫よ。そしてあなたも」
原始、私はピーマンだった。