ムズムズとタマネギが動くので
一枚一枚ゆっくりと剥いでいった。
どうせハンバーグのために微塵切りにするのだから構わない。
小さくなるにつれてムズムズは大きくなった。
「おとなしくしてないと、むけないよ」
と声を掛けると静かになった。
だんだん温もりが伝わってきた。
とっくに確信していたが、何かいることが実感された。
「もう大丈夫。出られるよ」
と聞こえたので、まな板の上に小さくなったタマネギをそっと降ろした。
ムズムズはやがてグラグラになりメリメリになってそれは生まれた。
「剥いたタマネギね、おれっちが養分吸っちゃったから、おいしくないよ。んじゃ」
それはあっさりと消えた。
残されたタマネギの欠片の一つををかじってみたら、
本当に何の味も辛みもないので
もう一つタマネギを出してこようとしたが、ひとつも残ってないのを思いだし、ため息とともに財布を手にした。