2004年1月31日土曜日

じゃがいも

男爵と女王がまた言い合いをしている。
俺のポテトサラダに関する議論らしい。
二人はある日突然台所に現れ、そのまま居ついてしまった。
男爵と女王はそれぞれ「男爵である」「女王である」名乗ったので、そう呼ぶことにしているが、あまりそのような高貴なものに馴染みがないので、本当は少し困っている。
「おい、男爵」とか「女王、ちょっと」などと呼びかけるのはどうにも気がとがめる。
男の一人暮らしの狭い部屋にわけのわからぬ男女が住み着くのは妙なので、初めの数日は出ていくように丁重に頼んだが、
「おぬしが呼んだのではないか」
と言って埒があかない。
彼らはどういうわけか、俺が好物のじゃがいもを食べる度に大騒ぎする。
ところが夜は二人でゴソゴソやっているらしい。
身分が違うのにいいのかな、などと思いながら俺は寝る。
そのうち「王子」なんてのが出てくると困るので、俺は今、当分じゃがいもを食べるのを止めようと思っている。