2003年12月23日火曜日

主水くんを待ち受けていたもののこと

混浴の「河童・ド・キャア」は脱衣場もなにもない。
建物の中に一歩入れば素っ裸の老若男女がウロウロしている。
「あーら、モンドちゃん」
「来たな、ババァ」
いきなり主水くんに抱きついた裸の 老女に主水くんは顔を背けた。
「ババァなんて言葉、どこで覚えたのかしら」
「こ、こんにちは、毬子おばちゃま」
この老女こそが主水くんの悩みの種である。
「河童・ド・キャア」の常連の彼女はこの浴場のお節介ババさまなのだ。
「レオナルド、モンドちゃんが私のことババァなんて言うのよ」
白髪混じりのお下げをいじりながら毬子嬢はションヴォリ氏に訴える。
「ほ? なんだ。マリーか」
ションヴォリ氏は脱衣カゴを数えるのに夢中で釣れないお返事。
「いいわ、モンドちゃん。レオナルドは放っておいて早くお風呂にはいりましょ」